地震と活断層(19):固着すべりの力学

update 2004.10/10

アナログ実験で見ると

えーっと、第14回から摩擦の話に突入しまして、だいぶたちます。そもそも固着すべりはどーやって起こるのか? を目指してきました。そのためのアスペリティとかメモリー効果とか臨界すべりとか速度弱化とかでした。で、今回からついに固着すべりの力学です。

実験 その1
  ↑実験を見よう! 実験ムービーその1.上の写真をクリックすると別ウィンドウが開きます(1.2M)。ただし FlashPlayer 7 以上が必要です。それ以前のバージョンの方は荒くて重いですがこちらへ(1.7M)。

  では固着すべりを実にうまく表現するブロックスライダーモデルの仕組みを見てましょう。モデルは糸巻きとバネとソリとオモリ(と床)でできていますl。ちょーシンプル。

  これを実際におもちゃを作って試してみました。実物を見るとこれがなかなかおもしろいんですよおお。ブロードバンド環境の方はぜひビデオの方も見て下さい。いいですよ。バネが伸びている間が地震の静穏期に相当して、びゅってすべった時が地震に相当するってわけです。うーん。見入ってしまいますね。すごいっっ

  1. 糸巻きがグルグル回るとバネがびよーんと伸びます。これがプレートによる応力と地殻の弾性歪に相当します。
  2. で、ソリにはオモリが載っていて、これはオモリは垂直応力なのでソリの摩擦を増加させます。
  3. バネが伸びてもソリは摩擦のせいで、しばらくはがんばって踏み止まります。
  4. でも限界に達するとズルッとすべります。するとバネが縮みます。
  5. 糸巻きは一定の速度で回り続けるので、またバネが伸びはじめます。元の環に戻りました
   うーん、このブロックスライダーモデルは停止/スリップ/停止/スリップを繰り返して、まさに震源断層の動きそのものですね。このモデルと断層との関係は右の図のような感じで、地殻の歪み(バネ)と封圧(オモリ)と断層(ソリと床)が上手に表されています。
   
 

互いに絡み合いながら力が変化する

  では、このブロックスライダーモデルが固着すべりをする時の力学を考えてみましょう。登場するのはソリの摩擦とバネの強さですね。ソリの摩擦はこれまで4回に渡って聴いてきたのでオッケーでしょう。そしてバネの強さも大丈夫ですね。 ただしここではバネの強さをスティフネス(K)っていいます。え、なんで言い換えるのかって? それはヤング率だろうって? そこが微妙にツボなのです。ま、そこんとこのヒネリはまた今度にして、取りあえず今回は置いておきましょう。重要なのはバネは弾性体だって事で、歪みと差応力とが比例します(伸ばせば伸ばすほど大きな力がいるってこと。第6回参照)。

  で、停止しているソリが動く瞬間の摩擦力がどう変化するかは前回やりましたね。そこにバネの力の変化が組み合わされればグラフはできあがりです。

  このアニメを見て頂ければ、ソリやバネの力が互いに関係しながら刻一刻変化する様子がわかったと思いますが、ま、一応説明しますと

1 2 3
バネが伸びると高い差応力がいります(第6回参照)。
ってことはバネの引っ張る力が増加! でもまだソリにはかないません。
つまりソリは止まってます。
止まっている間にアスペリティは食い込んでいくので、ソリの摩擦力は増え続けます(第16回参照)
4 5 6
でもバネの力はどんどん増えて、ついにソリに追いつきます。
そして臨界すべりへ。
アスペリティを乗り越える瞬間に高い剪断応力がかかります(左のグラフのピーク) 新しい表面の状態を獲得に成功しました! 動いている間は接触時間が短いので摩擦は小さ〜い。つるつる。 速度弱化って奴さっっっ
7 8 9
ソリが動くとバネも縮み始めて、バネの力も小さくなります。 でもソリの速度弱化はうんと大きいので、バネがソリを勝ります。バネはソリを引っ張ります。
つまり加速中!  
バネの力はどんどん減って、ついにソリを下回ります。つまり減速。加速のエネルギーと減速のエネルギーが釣り合う、、、上図のこことココの面積が等しくなればソリは停止します。
そして最初の環にもどります。
 

断層が震源たり得る資格

  まあ、断層というのは世の中にいっぱいあって、地層を切ってりゃなんでも断層なんだぁぁって話はだいぶ前にしましたね(第2回参照)。でもどれでも地震を起こす能力があるかと言えば、そりゃまた別の話です。誰でもできるわけではありません。まず第一に地震エネルギーを溜め込めるだけの丈夫な弾性体でなきゃだめです。すぐにヘタレるへっぽこ野郎では勤まりません。しかもただ強けりゃいいってもんでもない。なにせ繰り返して地震を起こし続けなきゃいけません。そのためには地震と地震の間に強度回復しなきゃいけません。そのために重要なのが速度弱化でした(第14回、18回参照)。これができなきゃ震源じゃない。そしてもう一つ。この速度弱化がバネのスティフネスよりも大きくなきゃいけないってことです。そーでなきゃ加速できませんからね。これが今回のポイントでした。

  速度弱化とスティフネス。この辺からスティフネスのヒネリが入ってきます。そこんとこはまた次回ってことで! じゃ。

 

今回は下記の教科書を参考にさせていただきました。
ショルツ 著/柳谷 俊 訳  「地震と断層の力学」

注:今回はFlashファイルが多用されています。うまく見れない方は無料配布されているFlashPlayerをインストールしてください。

四万十帯に便利

地震と活断層

1.でかい地震はどれだけでかい?
2.活断層はなぜ危険なのか?
3.沈み込みサイエンス
4.予知はすでに実現している?
5.ストレスがたまらねー
6.ストレスが原因ですね
7.必殺!グリフィスクラック:破壊力学1
8.クローン?いやクーロン:破壊の力学2
9.モールの美:破壊の美学3
10.スリッププレディクタブルはあり得ない
11.水圧と地震
12.破壊衝動に駆られて
13.壊したから.わかった
14.強ければそれでいいのか
15.摩擦って何よ
16.摩擦の追憶
17.そして地震の発生
18.あなたって.いざという時に...
19.震源になるために:固着すべりの力学
20.バネがすべりにスティフネス
21.質問はありませんか? あのー...
22.原材料表示があればいいのに
23.広大な断層のどこかに
24.脱臼でもしてゆっくりしたら
25.地震の巣 深部で起きていること
26.ダイヤモンドとじんせい −脆性破壊−
27.ハンガーニュークリエーション




 
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