地震と活断層(27)ハンガーニュークリエーション

update 2006.3/26

貝殻状断口(かいがらじょうだんこう)

 ハンガーの折れ口です。気泡と白い部分と黒い破断面が見えます。
 ガラスなどの割れ目にこんな模様をみたことないですか。
 同心円状の模様ができるってことは、こんな風に破断面がジャンプしてることじゃないでしょうか。これでは、割れやすい面が存在しているみたいです。

  こないだから脆性破壊の話をやってますが、先日ちょうどおもしろいものを見つけました。クリーニング店がくれるプラスチックのハンガーです。これがぽっきり折れてしまったのです。いかにも再生プラスチックという感じのモロそうな黒いプラスチックハンガーのフックの部分がスキーウェアの重さに耐えかねて、ポキリと折れてしまったのです。ま、それはしゃーないのですが、その折れ口が写真のようになってました。破壊面は、真ん中に気泡があって、白い部分と、貝殻状断口の部分があります。この貝殻状断口ってのは、ガラスや陶器のカタマリのように、特定の割れやすい方向がない(異方性と呼ぶ)物質に特徴的な破壊面の模様です。たしかに貝殻のような形をしてて、衝撃を受けたポイントを中心に半同心円をパターンを描きます。皆さんもきっとどこかで見たことあるでしょう。

  ところでどうして貝殻状なのでしょう? そもそもある特定のグリフィスクラックが成長するので、破壊面ができるのはいいとして(第7回参照)、同心円のパターンってのは破壊面表面に小さな段差でできているのですが、本当に異方性が無いなら段差はできないような気がします。つまりですね、ある成長してた面が、何かの都合で成長できなくなって、ちょびっと浅い側(もしくは深い側)にジャンプするから段差ができるのでしょ。だったら均質な物質ならスパッと段差も無いキレイな破壊面ができるべきじゃないのかって話です。だからきっと破壊は、あんなにも力強くて荒々しいんだけど、本当はものすごく微妙な異方性や、微妙な不純物、微妙な力学不均質性などの影響を受けるデリケートな奴なのかもしれません。

  そーいや、なんとなくカミナリも似たような面がありますね。あれも大気という分厚い絶縁体を突き破って進んでくるくせに、最後の最後に人間のヘアピンや釣竿それに傘といった、ちょっとした伝導体に落雷します。そこまでやってきて、どうして最後に? と、思いますが、まあおかげで避雷針に誘導することができるので、良しとしましょう。いやあ、それにしてもカミナリにとって、金属類はマジでたまらんのでしょうな。きっとビビビとくるんでしょう。

 

2つの破壊面

 ペンチでグニグニ曲げてひっぱりました。ついに白い面ができました。

  貝殻状断口の話はとりあえず置いといて、ハンガーの話に戻りましょう、このハンガーもきっと最後のバキッという瞬間に、貝殻状断口ができたのでしょう。で、その横には白い部分があります。このハンガーはいかにも安そうなプラスチックでできてます。ぐにゃーって塑性変形した部分が白く変色するんじゃないでしょうか。おお! それはおもしろいかも。こりゃ試してみなきゃ。というわけでハンガーをひん曲げてみました。ポキッ とあっさり折れます。おもしろいように折れますね。次々に曲げるとあっという間に短いパーツだらけになりました。でも、なかなか白い変色はおきません。しかたないので、ペンチでぎゅーっとつまんで引っぱったらようやく白くなって引きちぎれました。ぶちっと。なるほど。ゆっくり変形・破壊する時に、白い色になるようです。破壊面の色の違いは、変形・破壊様式の違いを示しているようです。

  ついでにもう少し確実にするために、追加実験を行いました。つまり壊れてない新しいハンガーも折ってみました。ポキッ おお、いい感じ。

 

ハンガーラプチャープロセス

  白い部分が前回の臨界破壊長さに対応するのかもしれませんね。

  と、いうわけで、このハンガーの破壊過程を考えてみましょう。きっとこんな過程を通ったんじゃないでしょうか。

1、ハンガーのプラスチックフック内部に気泡が混入した(きっと製造時)。

2、気泡がグリフィスクラックとなり、引っ張り応力が集中した。

3、クラックが成長開始! ただしゆっくりなので変形・破壊部は白くなった。

4、クラックはゆっくり成長して、ついに臨界破壊長さに達し、クラックの成長は一気に加速した。バキッ!

と、いうわけでこのハンガーの折れ口には、グリフィスクラックにおける応力集中から、ゆっくりとした変形・破壊、そして最終的な加速的な破壊、という一連の破壊プロセスが記録されてるんじゃないでしょうか。うーん。おもしろい。

 

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