Q.どうやって探すの?
A.まずは地形から探します。

 

■ 地形から??

 私たちが普段見ている風景、山や川や海岸といった地形は、悠久で不変のもののように考えがちですが、実は長い年月の内に少しずつ変化しています。

 大地は隆起し、山は削れ、川は土砂を運び、平野や海に新しい地層ができていきます。それはほんの少しずつですが、確実に進行しています。

 例えば、考古学の発掘調査のシーンを思い出してください。多くの遺跡は地表から数m下に眠っています。私たちが歩く地面は、かつての人々の地面とは高さが違うことがわかります。このように、日々眺めている風景も、長い歴史の中では一時的な姿に過ぎないのです。極端な言い方をすれば、高い山は現在なお隆起し続けているから高いのであり、川も水が流れ続けているから川でいられるし、活断層も断層活動を続けているからこそ、断層地形を保っていられるのです。

 というわけで、地形を刻んでいるという事は、それは今活動している、と考えます。

 

■ 断層がつくる地形

 地表では、隆起・沈降・削剥・運搬・堆積・海水準変動といった作用の結果として地形ができていますが、断層はそれらをスパッと切ります。山も尾根も谷も田畑も道路もお構いなしです。そんな線状の構造をリニアメントと呼びます。

 例えば、これは台湾中部地震(1999年9月M=7.3)の直後のチェルンプ断層の様子です。平坦だった田んぼに段差ができています。一回の地震でこれぐらいです。これが何百回も何千回も繰り返すと、だんだんと変位が重なって大きくなります。そうやってリニアメントができます。

 ただしリニアメントといっても、ただ線状ならなんでもいいというわけではありません。周囲の地形を見て、あぁここは火山だな、火山灰が堆積しているな、とか、ここに貫入岩があるな、とか、石灰岩が稜線を成しているな、といった風に地形や地質学的な背景を理解し、その上でそれを切る断層を認定するわけですからトレーニングと経験が必要です。
 

目の幅くらいの視差なら手に届く範囲くらいがよくわかる。

双眼鏡の幅くらいの視差なら、もっと遠い距離でもOK

昔の戦艦には、艦橋や砲塔に測距儀という巨大双眼鏡があり、これで水平線近くの敵艦の距離を測定していた。

 

■ 空から見る

 リニアメントといっても、地表でみるとなかなかわかりづらいです。活断層は地震直後にはスゴイですが、時間が経つと、徐々に崩壊し、草が生え、雨に流され、なだらかになり、だんだんわかりにくくなります。この小さな段差は田んぼのあぜ道なのか、それとも長く続く断層なのか? 地表で眺めていてもよくわかりません。

 そこで実際の調査には、まず空中写真が活躍します。空中写真というのは、飛行機から同じ地点がたぶって写るように次々と撮影したもので、同じ地点を微妙に違う角度から撮っているために3D観察ができます。これで微妙な凸凹を強調して地形観察ができます。

 なぜ立体に見えるのでしょう? 私たちは身の回りのコップや電話が立体的に見ています。これは右目と左目の2地点からの映像の差(視差)を、脳が瞬時に計算して立体感や距離を理解しているのです。ちなみに目は横に並んでいるので、高さを測るのは苦手です。おかげで天井に頭を打ちます。

 目の幅くらいの視差だと、手に届く距離を測るには好都合です。しかしちょっと離れた木の枝の鳥は、遠すぎて立体には見えません。そこで双眼鏡を使います。双眼鏡の対物レンズの幅は目の幅より大きいので、より大きな視差が得られます。これだと木の枝の鳥も立体に見えます。

 そんな双眼鏡でも、遠い山々は立体には見えません。もっと離れた視差が必要です。それが空中写真です。

 飛行機のフライト中にパシャリ、パシャリと真下を撮影していきます。同じ場所が重なるように撮ると、二枚の写真を撮る間に飛んだ距離の視差が得られます。これで微妙な地形的特徴を強調して観察することが可能になります。

 空中写真は最適な高さで撮影する必要があります。離れすぎると平坦に見えてしまいますから。ちなみに人工衛星軌道は高すぎます。やはり飛行機の高さが良いようです。

上空からの二地点で撮った写真なら、大きな視差が得られる。

■ まとめ

 それにしても「写真をながめてリニアメントがある」だけでいいの?と思ったかもしれません。たしかに写真だけを根拠に「あなたの家の下には活断層があります」なんてことを言われても納得できないでしょう。

 実際には、空中写真判読法で指摘されたリニアメントにおいて現地調査が行われています。その結果、数多くのリニアメントで、実際に活断層が見つかってきました。

 このように空中写真判読法は、専門的な訓練が必要であるとはいえ、効率的に広域調査ができる優れた調査方法なのです。